会社で恋しちゃダメですか?
リビングは、透明な光に満ちていた。
正面に大きな窓。その前に革張りのソファと大きなテレビ。右手にアイランドキッチンがあって、山科はそこに立っていた。
「似合うよ。ピエロみたい」
山科はそう言うと、卵をパンッとボールに割入れる。手早くかき回し始めた。
コーヒーメーカーが、コポコポと音を立て、香ばしいかおりがリビングに充満している。
「座って。パンと卵でいい?」
「はい……あの、お手伝いします」
「そう? じゃあ、棚からお皿出してくれる?」
「はい」
園子は片手でウエストを握りしめたまま、棚に手をのばした。真っ白な棚はぴかぴかで、作業台は大理石みたいに見える。棚を開けると、真っ白な食器たち。園子は片手で四苦八苦しながら、お皿を一枚一枚取り出した。山科は横目で園子を見ながら、笑い出しそうな顔をしている。
ふと棚の奥に、部屋の雰囲気に似つかわしくない、カラフルなマグが二つあるのを見つけた。思わず手に取る。
なんだか、たくさん使われてるみたい。
「あ、それじゃなくて、右側の白いマグ出して」
「はい」
園子はカラフルなマグをしまって、白いマグを二つ出した。
「半熟大丈夫?」
「はい」
「お砂糖とミルクは?」
「じゃあ、両方お願いします」
手早く支度をする山科の隣で、園子は手伝おうにも手が出せない。わたわたとしている間に、朝食の準備ができてしまった。
「座って」
「はい」
園子は素直に、ダイニングチェアに腰掛けた。