会社で恋しちゃダメですか?


「いただきます」
「どうぞ」


山科はマグからコーヒーを一口飲んだ。そう言えば、スーツ以外の山科を見るのは初めてだ。グレーのスウェット上下を着て、髪の毛はいつものようにセットされていない。整髪料をつけていない、柔らかな髪が額にかかる。


「なに? 俺、なんかおかしい?」
視線に気づいて、山科が笑う。


「いえ、スーツ以外の姿を見るのは、初めてだなって思って」
「池山さんのそんな姿を見るの、俺も初めてだ」


山科に言われて、園子はとたんに自分の無防備な状態を自覚する。
そうだ、これ……。


フォークを握っていた園子の手が止まる。


誰が着替えさせたの?


「まさかとは思いますが」
「なに?」
「部長がわたしを着替えさせてくれたんでしょうか……」
「うん」


なんていうこともないように、平然とした返事が返ってくる。


園子は慌ててパジャマを覗き込む。よかった、ブラはつけてる。


「きっ、着替えを貸していただいてなんですけどっ」
園子は言葉がのどにつっかかって、うまくしゃべれない。


「女性の着替えを男性が手伝うのは、やっぱりよろしくないんじゃないでしょうかっ」


すると、山科が堪えきれないというように、再び爆笑しはじめた。


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