会社で恋しちゃダメですか?
園子は勢いよく首を振る。
「ちがうちがう」
「でも先週、当然って感じで、園子のこと連れて帰ってたから」
「ああ、あれは……その……」
園子はどう返事していいのかわからず、口ごもった。
「園子を誰んちに泊めるか、相談してたんだよ。そしたら、あっという間に部長がタクシー呼んで『じゃあ』って、手を上げて連れて帰ったから、あの後みんな大騒ぎになったんだ」
「そんなことが……ぜんぜん知らなくて。ああ、恥ずかしい」
園子は顔を赤らめた。
「じゃあ、違うんだ」
「うん。ただの親切だと思う」
「変なことされてない?」
朋生にそう言われて、「えっ、そんなこと、あるわけないよっ」と園子は声を大きくした。
「そっか」
朋生の顔に安堵の笑顔が広がる。「ほっとした」
「ほっとした」
その言葉に、園子の胸がドキンとする。
そういえば、朋生は……。
考えると園子の顔が再び熱くなった。
「ありが……」
そう言いかけた瞬間、右腕を後ろから強く掴まれた。
「えっ」
朋生と園子の間に、山科が割って入って来た。
「おはよう」
そのまま山科が腕を引っ張って、廊下を早足で歩き出す。園子の足がもつれて、ビニールの床にかかとが強く当たる音が響いた。
びっくりしたような顔の朋生を見ながら、園子は山科に連れられてオフィスへと向かわされる。
「池山さん、昨日の件で、話があるから、きて」
山科が言った。