会社で恋しちゃダメですか?
オフィスに入ると、視線が一斉にあつまる。
山科は皆に平然と「おはよう」と言うと、そのまま園子を自分の部屋へ連れて行った。扉を閉め鞄を机に置くと、園子の方へ向いた。
「昨日の話、考えたんだけど」
「はい」
「本気?」
「本気です」
「よし」
山科は鞄から資料の束を取り出す。
「営業だけでは、竹永は救えない。この会社全体で取り組まないと。そのためには、竹永社長の理解を得る必要がある」
山科は資料を園子に手渡した。ずしりと重い、紙の束。
「まずはトップページにあるデータを集めて、午前中のうちに僕に送ってください。あと、秘書室に竹永社長のスケジュールを聞いて、アポを取ること。できれば今日の二時以降」
「はい」
園子は手元の資料をめくってみる。
それは、竹永を生き残らせるための提案書だった。
「これ……週末に作られたんですか?」
「そうだよ」
「すごい、です」
山科が笑う。
「まだまだ、これからだから。竹永社長の了解を得たら、信頼できる何人かを集めて、プロジェクトチームを組む。TSUBAKIに感づかれる前に、世の中に「竹永」を認識させるんだ」
園子は、なんだかドキドキしてきた。
こんな大きなことに挑むだなんて、初めてだ。
「頼りにしてるよ」
山科はそういうと、これで話は終わりというように、椅子に座りコンピュータを起動する。
園子は跳ねるような期待感を抱えて、自分の席へと戻っていった。