会社で恋しちゃダメですか?
「じゃあ、山科くん、一言」
田中専務はそう言って、一歩下がった。
山科部長が一歩前に出る。ぐるりと営業部を見回して、それから穏やかな微笑みを見せた。
「なぜ TSUBAKI化粧品が、この会社を欲しがったのか、考えてみてください。商品がいいんです。そうじゃなきゃ、あれほどの大きな会社が目を付ける訳がない。自信を持って、自社の商品を売りましょう。必ず、売れます」
営業部のぼやけた雰囲気が、一瞬で変わった。
「僕のやり方に異を唱える方が、いらっしゃると思います。歓迎です。僕は部長職ですが、若輩者。皆さんの方がノウハウも、経験も豊富だ。だから『おかしい』と思ったら、必ず言ってください。僕は監督者ではなく、サポートする立場なんです。みんなで、TSUBAKI化粧品をうならせてやりましょう。そして買収したことを後悔させないようにしてやりましょう」
一気にそこまでしゃべって、山科はにこりと笑顔を見せた。
「よろしくお願いします」
頭を深くさげた。
ぱらぱらと手を叩く音がして、それからすぐに大きな拍手へと変わった。
園子も、リストラの危機にめげていた心が、動き出すのがわかった。
「あの人、すごい、できる人だね」
隣から紀子がささやいた。
「うん」
園子も頷く。
「それに、すごくカッコイイ」
紀子がうきうきした様子で、そう言った。