会社で恋しちゃダメですか?
二
新しい毎日が始まった。
園子は寝不足の目をこすりながら、コンピュータの電源を入れる。
ゴールデンウィークは目前。紀子は、休みの間どこにいこうかと、しばらく悩んでいたが、園子にそんな心配は必要ない。ゴールデンウィークも、びっしりと仕事で埋め尽くされているからだ。それでも、不思議と園子の身体には喜びが満る。仕事でこんなにも充実して、楽しく過ごせるなんて、これまで考えられなかった。
初めての体験だ。
「ねえ、園子。今日、飲んで帰ろうよ」
出社したばかりだというのに、すでに夕方のことで頭がいっぱいの紀子が、誘って来た。
「ごめん、今日ちょっと用事があるんだ」
いつも誘ってくれる紀子に、申し訳ない気持ちがした。でも今は、遊んではいられない。
「今日も? 最近、付き合い悪いよぉ」
紀子がふてくされたように、口を突き出す。
「おはよ」
朋生も疲れた顔をして、椅子にどさりと腰をおろした。
「おはよ。朋生、今日飲もうよ」
紀子が身を乗り出して、朋生を誘う。
「悪い。予定があるんだ」
朋生も当然のことながら、断る。
「何よ、もう。二人して、いつもいつも。きみたち、付き合ってんじゃないの?」
紀子が腕を組んで、二人をじろりと見回した。
「ちげーよ」
朋生は暑いのか、腕まくりをして、ほおづえをつく。園子も笑いながら首を振った。
「もういい。誘わないから」
紀子は「ぷん」と声に出して、頬を膨らませる。
朋生と顔を見合わせて、ふたりで困り果てた。