会社で恋しちゃダメですか?


あの夜の会議。
山科のプレゼンテーションは完璧だった。


各部署から集められた社員達は、自分の置かれた立場に、身を引き締めた。このまま無職になることは、避けたい。加えて、勤めている会社に愛着もある。山科の「やってみよう」という言葉に、皆は真剣に頷いた。


「要は、竹永と商品を密接につなげて、TSUBAKIに横取りされないように、するんだ」
山科は、分厚い資料を手に、説明した。


「まずは、生産体制を整える。この件は、生産部に既に伝えてあるよな。どう? 期日までにできる?」
「今、調整中です」
生産部の女性係長、小西が言う。


「オッケー。任せた。連絡して」
山科が小西の目を見て、頷く。小西の頬が少しピンクに染まるのが分かった。園子はその様子を、不思議な気持ちで見る。


「それから、試供品を資料に記載されてるだけ、用意してほしい」
「はい」
「山本」
「はい」
朋生は呼ばれて、背筋を伸ばす。


「これまではドラッグストア中心に、営業展開してたよな」
「そうです」
「池山さんがリサーチしてくれたところによると、購買するのは皮膚がデリケートな女性中心らしいね」
「はい、オーガニックをうたっていますし、肌の保湿効果も高いようです」


山科は背もたれに身体を預けると、腕を組む。


「皮膚科に売り込むのはどうだろう」
そう言った。

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