会社で恋しちゃダメですか?
「これからお部屋をつくりますので、しばらくお待ちください」
園子がそう言うと、山科がぽかんとした顔をする。
「何、言ってるの。僕ももちろんやるよ」
「でも……」
「自分のことは自分でって、子供の頃言われただろう?」
そう言うと、さっさとミーティングルームへと入って行く。園子はその背中を慌てて追っかけた。
ミーティングルームは、六畳ほどののカーペット敷きの部屋。蛍光灯をつけると、ぱちぱちと音がした。部屋の両側に段ボールが山積みされている。
「これ、どこに持って行くの?」
「倉庫があるので、そこに持って行きます」
「わかった」
山科は背広のジャケットを脱ぐと、腕をまくった。それから磨りガラスの窓を開ける。道路から来る車の音と、排気ガスの匂い。小さなこの部屋が一気に外界と繋がった。
「倉庫、案内して」
「あ、はいっ」
すでに段ボールを抱えている山科に続けと、園子も働きだした。