会社で恋しちゃダメですか?
二
朋生がよそよそしい。土曜日のことを、きっと勘違いしているに違いない。確かに朋生と出かけることを躊躇したけれど、あれは仕事の一部であって、他の誰の予定であっても断っていたはずなのだ。
ちゃんと話さなくちゃ。
気持ちも含めて、全部。
三人で深夜に残るオフィス。ちょっと前までは楽しかったのに、今は変に緊張してしまって、辛い。
山科は態度を徹底させている。いやむしろ、園子から距離を置いているような気もした。
気のせい?
でもなんだか、違う気がする。
「とりあえず、関東近県の病院と薬局は、ほぼすべてあたりました」
朋生が報告する。
「これ以上、増やすことはできない?」
「まだ流通も少なく、慎重な病院もたくさんあるんです。他の出方を見るというか」
「そうか……他に、売り上げを増やす案はあるか?」
山科がペンを指でくるくるを回しながら、考えている様子を見せる。
「そうですね、妥当なのは通販だと思います。口コミサイトに広告を出して」
「そうだな」
山科がボールペンを唇にあてる。それを見て、園子は、頭の後ろに唇があたったことを思い出す。
「営業からその人員を出すのは、難しいから新規採用になるな」
「はい」
「でも、人件費を出せるほど、余裕はない」
園子は「あの」と手を上げた。
「何?」
「思ったんですけど、長野の工場に通販の拠点を置くのはどうでしょう。長野はもともとパート社員でまかなってます。時給ベースも東京よりは低いし、在庫を調整しやすいと思います。配送料も低くなりますよね」
山科が園子の顔を見つめながら、考える様子を見せる。それから「よし、そうしよう」と言った。