会社で恋しちゃダメですか?
「うん、わかった」
園子が答えると、朋生の顔がぱあっと明るく輝く。
「じゃあ、出張から帰って来たら、どこいくか決めよう」
「うん」
朋生は、口笛を吹きそうなほどの、ご機嫌の様子に早変わり。園子は、戸惑いの方が大きいことが、申し訳ない気がした。
「わるかったな、待たせた」
山科がポケットに携帯を戻しながら、オフィスに戻って来た。
「大丈夫です」
朋生が大きな声で言う。
朋生が先ほどとは打って変わりウキウキしているのを見て、山科はいぶかしげな顔をした。それから園子の方を見て、合点したというような表情を浮かべる。
そして、園子から視線を外した。
ただそれだけで。
それだけで、園子はなぜか泣きそうになる。
忘れてほしいと言われたから、忘れることにしたんです。
園子のペンを持つ手が揺れる。左手でそっと自分の右手を押さえた。
どうしよう。
どうしたらいいの?
わたし、部長が、好きなんだ。