会社で恋しちゃダメですか?
バスルームの扉が開くと、もあもあと湯気が部屋にはいってくる。
「池山さん、どうぞ」
山科は、コンビニで買った白いTシャツに紺色の短パンという格好で、ベッドのうえに腰を下ろした。黒髪は濡れて、オレンジ色の光の下で光っている。
園子は山科のその様子から逃げるように、「じゃあいただきます」と言ってバスルームへと走り込む。
友人と泊まっていると思えばいい。
女性の友人。
園子は何度もそう自分に言い聞かせた。
バスルームを出たら、もうぐっすりと部長が寝ていますように。
そんなことも願いながら。
シャワーが終わると、コンビニで買った山科のものとまったく同じものを着る。なんだかそれも心を落ち着かせなくする。このまま夜通しこの動悸がとまらなければ、高血圧か何かで倒れてしまうんじゃないだろうか。
気合いを入れてバスルームを出ると、部屋はもう暗くなっていた。ベッドの片側には山科が布団をかぶって寝ている。
心底ほっとした。
園子はベッドの反対側に、そっと身体を入れて、ぎゅっと目を閉じた。