会社で恋しちゃダメですか?
隣に山科が寝ている。園子はベッドから転げ落ちる寸前のところで、身を丸くして息を潜めた。少しでも動くと、山科に触れてしまうんじゃないか、そんな心配で気が狂いそうだった。
眠れない。
園子は閉じていた目を開けて、窓の外の月を眺めた。真っ暗な空に白い三日月。
緊張して頭が痛くなって来た。身体もこわばって、もぞもぞしてしまう。それに夜は冷えた。山科との間にあるシーツは、一向に暖かくならない。震える身体を両手でこすった。
すると、身動き一つしていなかった山科が「寒い?」と訊ねてきた。
「……起きていらっしゃったんですか」
「うん。眠れなくて」
振り返ると、山科の白い背中が見える。
山科もこちらをちらっと見ると、しばらく何かを考え、それから園子の方を向いた。
「長袖を買うべきだったな」
肘をたてて、頭をささえる。
「そうですね。掛け布団も薄くって……」
園子は更に身体を縮めて、布団の中に頭まで潜り込もうとした。
「嫌じゃなければ」
「はい?」
「もうちょっとこっちにくれば、暖かくなるかも。池山さん、今にもベッドから落ちそうだ」
心臓のスピードが早まる。
「嫌じゃ、ないんですけど、でも」
「じゃあ、おいで」
山科は園子に腕をのばした。