会社で恋しちゃダメですか?


「政治家はしょっちゅう来るし、お歳暮部屋っていうのがあって」
「なんです、その部屋」
「倉庫みたいなもんなんだけど。贈られてくるお中元やお歳暮を、そこに一時的に仕舞っておくんだ。消費しきれないから」
「……ぜいたく」
「ほんと、贅沢だよな」


山科がごろりと仰向けになる。


「俺は気づいてなかった。自分が特権階級にいて、その恩恵を充分にもらっているということを。家を飛び出て、初めてしったんだ。自分と周囲の人々の違いを」


「その経験があるから、部長は高慢じゃないんですね」
園子は言った。


「池山さんちは、どんな?」
山科にそう聞かれて、園子は困ってしまった。ごくごく普通の家だからだ。面白い話なんか、一つもない。


「普通です」
「普通って?」
「普通すぎて、説明できません」
「なんだ、そりゃ」
山科が笑う。


「池山さんってさ、表現が面白いよな」
「そうです……か? それは喜んでいいものでしょうか」
「ほめてるんだよ」
「じゃ、一応ありがとうございます」


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