会社で恋しちゃダメですか?
園子ははらばいの格好になった。山科が園子の首の後ろの髪を、そっと脇に寄せる。きゅーっと、園子の身体の中心を何かが通り抜けるような感覚がした。ただタグを切ってもらうだけなのに、なぜか手が震えだしそうになって、慌ててその手を自分で押さえつける。
ぱちんと、小さな音が聞こえて、山科の指がタグを取り出した。
山科の指が離れると、園子はほっとして身体をくるりと仰向けにした。山科を見上げる。
思ったよりも近くに、山科の身体があった。肘をついて、園子を見下ろしている。
自身の身体を支えている腕。暖かな胸元。きれいな鎖骨。そして首筋。
目が合った。
ありがとうございます。
その一言を言いたくて、口を開いたが声がでない。
「君は……」
山科がつぶやくように言った。
はさみとタグを置くと、園子の髪をそっと指に絡める。そのまま耳の後ろを軽く触った。
「あ……」
園子はきつく目を閉じて、声を漏らした。
山科が園子の耳から首へと手を滑らせて、軽く持ち上げるように力を入れた。
「わすれようと思っても」
園子は目をぎゅっと閉じながら、必死に言葉に出した。
「わすれられません。どうしたらいいんですか」