会社で恋しちゃダメですか?
「彼女は?」
あおいがお皿にクッキーを並べながら、山科にといかける。
「部下だよ」
「TSUBAKI の?」
「いや、竹永コスメティックスの社員」
「そっかあ」
あおいの顔に笑顔が広がる。
「わたし、本城あおいって言います。竹永の美容クリーム、ずっと愛用してるんですよ」
親しげに園子に話しかけた。
「ありがとうございます」
園子は頭を下げる。早くここから脱出したい。
「名前は?」
「池山です」
「あっ、電話とってくれた人かしら」
あおいが問いかけるような表情をした。
「折り返しお願いしますって言ったの。名前が池山さん」
「ああ」
園子は思い出した。たしか「本城」と名乗っていた。
あのときの、山科の驚いた顔を思い出した。
そっか、あの日から……。
ダイニングテーブルの上に、コーヒーとお菓子が並ぶ。
「達也、これ」
園子の目の前で、あおいがマグを手渡す。そのまま山科の隣に座った。
園子は渡された白いマグを両手で持って、なんとか笑っていようと懸命になっていた。
「池山さん、彼氏はいる?」
唐突に、あおいが聞いて来た。
「いえ……」
園子は首を振る。
「もしかして、達也のこと好き?」
園子は思わずマグを取り落としそうになった。「あつっ」
「大丈夫か?」
山科が手をとろうとしたが、園子はぱっと引っ込めた。
「大丈夫です」
園子は笑顔でそう言った。
「おい、あおい。失礼だろ」
「ごめん、聞いておかないとっておもって」
あおいは首をすくめた。