会社で恋しちゃダメですか?
あおいに指定されたカフェは、大通りから一本入った裏道にあった。北欧風のインテリアがかわいい、サラダとパンのランチセットが人気の店だ。
園子はふらふらしながら、カフェに入る。日差しがはいって、暖かな店内。磨かれたウォールナッツのテーブルに、赤いグラス。窓際の目立つ席に、あおいは座っていた。
「池山さん、ここ」
あおいはサングラスを取ると、園子を手招きする。園子は素直にあおいの前に腰掛けた。
「突然誘って、ごめんなさい」
「いえ、大丈夫です」
「何、食べます? わたしはもう、ランチセットを頼んじゃった」
「わたしは……食欲があまりないので、暖かい飲み物だけいただきます」
園子が言うと、あおいは心配そうな顔をする。
「風邪?」
「たぶん。でもすぐよくなりますから」
「このジンジャーティがおすすめよ。身体がぽかぽかして、風邪に効くの」
「じゃあ、それをいただきます」
園子はドリンクをオーダーした。
あおいは、自分のプレートを、きれいな仕草で食べる。こんなにきれいに食べる人は、見たことがなかった。園子はゆっくりとジンジャーティを味わう。確かに風邪にききそうな味だ。
「池山さん」
あおいがサラダをフォークですくいながら話しかけた。
「はい」
「わたしたち、アメリカで暮らしてました」
「……そうですか」
「この話に興味はない?」
「別に……得には……」
聞きたくない、そんなこと。