会社で恋しちゃダメですか?
朋生がしばらく園子を見つめる。それから「俺って、最悪」と言った。
園子は「どうしたの?」と朋生を見る。深刻な顔をして、園子の瞳から目を離さない。なんだか気まずくて、園子は目をそらした。
「部長に彼女がいるって知って、俺、すごいほっとした」
鞄の口を締めようとしていた園子の手がとまる。
「どんなに園子が部長を想っても、思いが通じることはない」
「山本くん……」
「あんなにいい男で、仕事もできて、俺にないものを全部持ってる。そんな奴に俺がかなうわけないって、めちゃくちゃ凹んでた。今だって凹んでる。でも、園子の思いが一方通行なら」
「ねえ、やめて」
「いつか、俺を……」
「お願い、やめてっ」
園子は顔を両手で顔を覆った。朋生に言われるまでもない。園子の思いが通じることなど、ありはしないのだ。
あおいの輝くばかりの肌に、美しい瞳。自信に満ちあふれて、山科を心から求めていた。山科が彼女を忘れることなど、ないだろう。
園子は鞄を持って、席を立つ。「かえる」
「園子」
朋生の呼びかけを振り切って、歩き出した。
「まって、園子」
朋生が園子の腕を掴んで、引っ張った。
園子はよろけたが、すぐに朋生がその胸に引き寄せる。
腕の力が強い。ぎゅうっと腰が持ち上げられる感じがした。
「山本くん、離して」
「やだ」
「ねえ、山本くん……」
「忘れろよ、部長のこと」