君と家出中…
『お兄さんの名前は?』
倒れたキャリーバッグを起こしてくれている背中に聞いた。
『佐伯 遼(サエキ リョウ)』
『リョウ…』
『おい!呼び捨てかよ!』
『私、16歳、高校1年生。杏って呼んでいいよ!私も遼って呼んでいい?』
グゥ〜〜〜〜〜!!!
何だか楽しくなってきて、大きい声を出したら、お腹の虫も大声を出した。
『21歳、大学3年生!好きにしろよ、食いしん坊!』
遼がニヤニヤ笑いながら言った。
『ひどい!食いしん坊じゃないもん!』
恥ずかしくて真っ赤になってる私の頭をクシャクシャと撫でた。
『何か食いに行くか?』
『うん!』
私のキャリーバッグを引いて歩き出した遼の後ろについて駅へ向かった。