海賊王女と無敵な人魚の王子さま
皆が無事を確認しないで、そのままになんてできなかった。
海のなかで、流れる血を止めるのは難しい。
貧血を起こし、意識をもって行かれそうになりながら、それでも。
なんとか目を覚ましたまま、海面に浮かんだシーヴルと、エタンセルに合流した時だった。
ズガーーーンッ!
突然ものすごい音がして、わたし達は全員驚いて振り返った。
すると、そこには。
いつの間にか新たな船が、来ていたんだ。
それは、ただ一隻だったけれども。
波を蹴立て、火薬の大砲を散々と打ち鳴らしながら、紅の自由号と、海賊船の混乱の中にやって来た船は、今までに見たことのないほど大きい四本マスト仕立て。
装飾も豪華で海上に建てられた宮殿のように立派なくせに、船足がめちゃくちゃに速い、異国の船だ。
世界を福包国と二分する大国『シアンス王国』の旗を掲げ。
船首に書いてある船名プレートには、世界公用語で『疾風号』と書いている。