海賊王女と無敵な人魚の王子さま
 本来ならば、これで終わり。


『判った、帰って良い』って言えば、三人は、このまま静かに去ってゆくだろう。


 だけど、わたし、全く納得できなくて。


 手をぎゅっと握りしめると、騎士団団長に声をかけた。


「……今までわたしに仕えてくれていた『鳥』はどこですか?」


「……姫さま……」


「わたしが飲むはずだった毒の杯を変わって飲んだ挙句。
 胸に致命の刃を受けてしまった、ニーナは、今どこに?」


「姫さま」


 答えなんて、本当は知ってる。


 けれども、どうしても聞きたかったんだ。


『鳥』は、わたしを……フロンティエールの第一王女であり、魔法使を使うわたしを暗殺から守る、影武者だった。


 わたしと同じ姿をして……声をして。


 危険な場所に『王女』として公の場に出てゆく役目の、わたしとそんなに変わらない年頃の少女たち、だ。


 わたしに一番近い者、と紹介されながらも『鳥』が黒いマントと仮面を取らなかったのは。


 そのマントの下に、わたしと同じ顔があるからで、顔を見ても意味がない、とされているから。


 それと。
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