海賊王女と無敵な人魚の王子さま
 わたしの命を狙っている者は多く……『鳥』はすぐに死んでしまうから。


『鳥』の役目を負った個人の名前も……その存在も、わたしは覚えていなくていいって!


 まったく、冗談じゃないわ!


 この前まで『鳥』としてわたしの側に居たニーナは、違う。


 女の子にしてはかなり、武芸に秀で。


 何度も暗殺者の襲撃に耐えて、今までで一番長く一緒に居られた『鳥』だったのに。


 ようやく仲良くなって、本当は教えてくれないはずの名前を教えてもらって。


 ずっと、元気にわたしの『鳥』をしてくれるって約束、したのに。


「この『鳥』は、ニーナじゃないよね?
 新しい『鳥』が来たって言うことは……ニーナは!?
 ニーナは、どこよ!?」


「『鳥』に名前はございません。
 一羽去れば、また同じ一羽がやって来て、姫さまに仕えるだけですから。
 姫さまにおかれましては、なにとぞ、下々の者とは関わりなく。
 お心を安らかに……」


「同じ一羽なんて、いないわ!」


 最後のニーナの様子を見る限り、傷はかなりの深手だった。


 運が良くて今も、ベッドに寝ているに違いなく。


 運が悪ければ……
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