海賊王女と無敵な人魚の王子さま
 左手のワイヤーを次々と飛ばし、マストやロープに引っかけて。


 船の上を鳥のように移動するフロンティエ-ルの戦い方を身につけた精鋭が五十名。


 確かに人数は少なくても『雑魚』扱いの男(ひと)は誰も居なかった。


 剣を、槍を。


 それぞれ自分の得意の武器を持って空を舞えば、彼らの前に敵は無い。


 その中でも一番目立つのは、わたしと同じ真紅の長い髪をなびかせた、短槍使いのエタンセルだ。


 彼はフロンティエ-ルがある頃、国一番の武勲をジーヴルと競っていたほどの手練(てだれ)だった。


 細身で軽い身体を生かし、ヒュウッっと風を切って敵に突っ込んでゆく。


 自身の身長より、やや短めのエタンセルの槍が一閃するたび、敵の海賊たちが何人も面白いようになぎ倒されていった。


「くそぉ! この! ちょこまかと!」


 素早く動く、紅の自由号の仲間たちを、一人も捕えられず。


 まともな戦いにもならないまま、一方的にやられて行くのに、腹を立てたらしい。


 とうとう敵の海賊たちが、マスケット銃を持ちだしてきた。 
< 6 / 31 >

この作品をシェア

pagetop