海賊王女と無敵な人魚の王子さま
 彼の手元に自身の身長よりも長い、古代の木でできた魔法杖(ストゥッツ)が船長室から飛んでくる。


 それをつかんで、ジーヴルは杖の先で何もない空間に光の四角の窓を描くと。光の枠の中に数字がぱぱぱぱ、と現れた。


 微かな音を立て表示されたのは今、紅の自由号が持っている魔法の総量だ。


 それを確認したジーヴルはうなづいた。


「大丈夫です、イリスさま。
 今夜は、満月。
 夜には回復が期待できるので、残量の半分は使えます」


「了解。
 でも、基本こっちが優勢だから、あまり大きい魔法は要らないわ!
 火薬を使うマスケット銃だけ封じます!」


「承知いたしました」


 うなづいたジーヴルは、手に持った魔法杖を床に、とんっ、と打ちつけ、空中の光の窓を消すと。


 魔法杖を両手で持ち直し、わたしに差し出した。


 それを手に取り、改めて、とんっ、と甲板に杖を打ちつけると、わたしは呪文の詠唱に入る。


『我が親愛なる氷結の神に、願い奉る……!』


 すると。
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