されど其は希求する
 しかしそれらは長い刻の間に伝える者は潰(つい)え、この刃(やいば)と同じく人の記憶の中に埋もれる事すら許されなかった。

 いつか訪れる新たな主人を待ちわびて、幾月か幾年か幾百年か──今は遺跡と成り果てた廃墟を遠くに望み、ちらりほらりと落ちてきた白く冷たいものに、欠ける事のないその身をただ晒し続けるだけだ。

 この世界の理(ことわり)など理解する気はなく、そもそもこの剣に理解出来るのかも解らない。

 時間の経過すらも剣には一瞬の出来事でしかなく、ただ己を使いこなせる者を待つのみだ。





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