雨音
霧雨

君との距離

 4月上旬。
  
 入学式までは満開だった桜の花も今ではすっかり散って、淡い緑の葉が芽生え始めていた。
  
 此処。

 2年教室からの外の眺めは最悪で、見えるのは透き通った青い空と香川県と徳島県の県境となる讃岐山脈だけ。
  
 それに対して1年教室は、青い空と讃岐山脈はもちろん、校庭の大きな桜の木まではっきりと見えていた。

 文句なしの田舎ならではの最高の景色だった。
  
 入学して間もない1年生たちは楽しさと期待で胸がいっぱいだろう。
  
 毎日毎日、隣の教室からは明るい笑い声が聞こえてくる。

 しかし、1年間も中学校に通ってしまうと飽きてしまう。
  
 私たちの2年教室からは笑い声一つ、聞こえてなんかこない。
  
 ある人は本を読む、ある人たちは趣味の話で盛り上がりそのことについて深く語り合う、または私みたいにボーっと外を眺めているか。
 
 盛り上がってはいるものの、笑える話なんかではなく、趣味についての情報交換みたいなもので正直、つまらない。
  
 こんなギスギスとした雰囲気の教室で恋をするのか、というと現にカップルは2組くらいはいる。
 
 でもその中の1組はうまくいっていない様子で別れるか、別れないか微妙な関係。
 
 私、篠宮歌乃も只今同じクラスの男子、如月真人に恋をしている。

 そんなに仲がいいこともなく、悪いわけでもない。ただの友達。
 

 
 



 





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