雨音
キーンコーン カーンコーン
 
6時間全ての授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。

 今日は1週間で唯一部活が休みの日。今は4時。帰ってゲームをする時間が2時間はとれるだろう。

自分の勉強以外の時間を1分でも多くとろうと、急いで帰る生徒たちが早足で外に出た。

 私も帰って実況動画を観たり、ゲームをしたりしなければいけない。

私も急いで帰る準備をした。

「あ、篠宮さん。5教科のプリント30人分の分けておいてくれないかしら。」

「・・・・・え。」

「大丈夫よ。そんなに量は多くないし、暇な如月くんも手伝ってくれるから。」

2年の主任・宮古先生が帰ろうとしていた私と真人くんを引き留めた。

「はぁ!?ちょっ先生!!俺、早く帰りたいんですけど!」

「授業中に居眠りしてたバツよ。じゃあ頑張って。4時半には終わらせて帰りなさいよ。」

宮古先生はそう言い残してパタパタと階段を下りて行った。

「はぁ。ゲームしようと思ってたのになぁ。」

 真人くんは渋々とプリントの束を持って席に着いた。私もプリントをとって真人くんの隣の
席に座った。

「授業中に居眠りとか・・・」

 私はふふっと笑った。

「うっ。春は眠くなるっていうだろー。」
 
真人くんは小学生のような言い訳をした。

「えー。あ、でも理科は眠くなるよね。」

「理科は面白くないからなぁ。」
 
 ちょっとしたことを話すだけで顔が熱くなる。心臓の音も速くなっていく。

 こんなに真人くんと話をしたのは何ヶ月ぶりだろう。

 もっと一緒にいたい。

 そう思うのに5教科のプリント30人分を分ける作業はあっという間に終わってしまった。


「はぁ~。さ、帰るか。」

「・・・ん。」

 5教科のプリントを手に取り、教室を後にする。
 
 誰もいない廊下を2人が横に並んで歩く。私と真人くんとの距離は約30㎝。

 少し視線を右に逸らすと真人くんの横顔が見える。

 それは、オレンジ色の夕日に照らされてとても綺麗だった。

 帰り道は別々の方向で一緒には帰れなかったけど。

 16時23分。

 オレンジ色の夕日に照らされながら、誰もいない静かな廊下を2人で歩く。
 
 ただそれだけのことなのに私にとって特別な放課後になった。
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