雨音
 そんなこんなでしーちゃんと駄弁っていると、野球部の練習も残り30分くらいになった。

「あっれ。紫雨と篠宮さん?練習、見に来てたんだ?」

「やっほー真人。」

 私の心臓がドキッとはねた。

「なんだよー。来てたんなら声かけろよー。」

 真人くんは私たちの所まで駆け足で近づいてきた。

「いやいや、真人は部活中だろ。」

「もうちょっとで終わるしー。あ、篠宮さんも途中まで一緒に帰る?」

 突然の真人くんからの誘いに動揺し、声が出なかった。

「今なら、っていうか今日なら真人がアイス奢ってくれるよ。」

「え!?そうなの!?俺、初耳なんだけど!?」

 しーちゃんの冗談に付き合う真人くん。

 2人のしょうもないやり取りが私は大好きだった。

 そして、誘いの答えは既に決まっている。

「・・・邪魔じゃないんだったら一緒に帰ってもいい?」

「勿論!!」

 真人くんは笑顔で答えてくれた。

 それに『いいよ』じゃなくて『勿論』と答えてくれたことがとても嬉しかった。

「じゃあ、後でね。」

 真人くんは手を振りながらグラウンドに戻っていった。

「・・・・やったね。歌乃。」

「うんっ!真人くんと一緒に帰れるとか!!嬉しすぎ!!!」

 好きな人と一緒に帰るのは乙女の夢。

「しーちゃん、ありがとうっ。」

「俺は別に何もしてないよ。」




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