殺人ごっこ
その瞬間、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「お邪魔しますー」
僕はその声に驚き、パソコンの履歴を一生懸命になって消した。
どしん、と階段を使って上がってくる音が聞こえた。
アリバイ……アリバイを作らなくては。
別にパソコンを消せばいい話なのだが、その時は非常にパニックしていたので、僕はお気
に入りにいれてある「チャット」という文字をクリックした。
それと同時に、僕の部屋の扉が開いた。
「凛太郎、いる?」
少し鼻息を荒くして、幸乃が入ってきた。
「いる、けど……どうしたの、幸乃」
「心配して、来ちゃった。昨日のアレ、もあるし」
別に心配しなくてもいいよ。
さっきの動画のことで腹立っていた僕は、心の中で毒づいた。
「うん、だから大丈夫だって」
「でも、またパソコンやってるじゃん。何してるのさ」
幸乃が無理矢理に僕をパソコンの前からどかした。
そしてマウスを片手に、動かし始める。
さっき履歴を消しておいて良かった、安堵の溜め息が漏れた。
「チャットだよ、チャット。いいじゃん、変なとこ覗いてないし、プライバシーの侵害だよ」
「馬鹿。あたしは凛太郎のためを思って言っているんだよ?」
幸乃が叫んだ。
圧倒してしまうほどの、ボリュームだった。