殺人ごっこ


「か、母さんっ?!」


勢いよく、さっきまで母さんの寝ていた居間へと駆け込んだ。




お母さんは――



――いた




さっきまで寝ていたみたいだ。

迷惑そうに目を開けて、「んん……どうしたの、凛太郎」と呟いた。


良かった。

生きていた。

何もされていない。



良かった。



「ふ……うわあ……ん……母さんのっ……馬鹿っ」


僕は小学6年にもなって、母さんに泣きついた。

恥ずかしさなんて、プライドなんて、今の僕には関係なかった。


この温もりが失われるなんて、考えたくもなかった。


「なんだい、この子は。いい年にもなって……ねえ」


母さんは優しく僕を抱き締めてくれた。

良かった、本当に良かった。

僕はその言葉と嗚咽を何回も繰り返していた。
< 23 / 79 >

この作品をシェア

pagetop