殺人ごっこ
「おはよ……あれ、凛太郎、顔色悪いよ?」

「う、うん……ちょっとね」


僕の心の中で【manslaughter】という存在が、大きく変わろうとしていた。

味方? いや、違う。

敵? いや、違う。


逃れられない、あと1つの道。


ここは通らなくてはいけないのだ。

味方でも敵でもなく、それは僕の通る道だ。

時折味方に、時折的になる、気ままな道なのだ。


「おい、凛太郎。そういえば、まだ借り返してなかったよな?」


首根っこをつかまれた。

ほら、やっぱり。

失えばこれほども変わってしまう自分の人生。

また、いじめの毎日。

けれど得れば、残酷な思いはするがこんな思いはせずにすむ。


だから【manslaughter】は、僕に必要な道なのだ。


「んぐっ……や、やめて……」

「なんだ、こいつ。いきなり弱くなりだして……昨日と、比べ物になんねーじゃねえか」

「きっと健太の凄さに溺れちまったんだよ」

「マジでか? こいつ、馬鹿だあ」


乾いた笑いが聞こえる。

僕は命からがら逃げ出し、切れた唇を舌で舐めた。


そうだ、1人で道を通るから怖いんだ。

それならば、仲間を見つければいいじゃないか。

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