殺人ごっこ
5th 第一標的
夏だと言っても夜になると風は冷たくなるものだ。
時刻は零時を回っており、町は深い眠りへとついていた。
僕は静かに外に出ると、指示通りに動いた。
全身をジャージで包み、手には手袋をはめ、靴は足跡がついてしまうと困るので厚い靴下で代用した。
――【玄関の端、黄色いバケツの近くにビニール袋があります。その中に、ナイフが入っていますのでそれを懐にお入れください】
あった、黄色いバケツの影に。
僕はおもむろにビニール袋ごと、あらかじめ用意しておいたボストンバッグの中に入れた。
――【也村健太の部屋は必ず東側の窓が開いているので、物置を伝い侵入してください】
健太君の家まで、走って10分もかからなかった。
目立つといけないので懐中電灯も付けず、真っ暗闇を必死で走った。
健太君の家につくと、2階の窓からカーテンが靡いていた。
僕は指示通りに物置を探した。
「……なるほど」
物置には出っ張りがいくつかついており、物置の天辺まで登りやすそうだった。
そのうえ物置と部屋の窓は隣り合っているので、侵入はいとも簡単に出来るのである。
なるべく音を立てないように、物置を登り天辺まで着いた。
僕はボストンバッグのファスナーを半分開けると窓を全開に開けた。