殺人ごっこ
――【也村健太は昨日夜更かしをしているので、零時を回る頃に行けば必ず熟睡しているでしょう】
慎重に窓の下部に足を乗せ、身を捩る。
窓の下では健太君が、有意義に寝息を立てていた。
シアワセそうな顔で、いつも僕を苛めているときとは反対の顔で。
思わずこっちまで笑顔になってしまう。
けれど僕は、この人を殺しにきたんだ。
ボストンバッグから覗くビニール袋の中で、ナイフが光る。
ああ、これが現実。
僕は静かにビニール袋からナイフを取り出した。
手入れが施してあり、今にも「斬りたい」と叫んでいた。
「ごめん……健太君」
僕はポケットの中から睡眠薬を取り出し、水筒にいれてあった水と一緒に健太君に飲まさせた。
万が一起きないように、だ。
僕はナイフを手に持ち、そっと健太君の喉元に当てた。
「ごめんっ……」