殺人ごっこ


「ごめん……全部、僕が……」


全部、僕が奪ったんだ。

その笑顔も、幸乃のこれからの人生も……全部。


ごめん、ごときで許されることじゃないけれど。

謝っていないと僕が消えてしまいそうだった。

悲しみに押し潰されて、消えてしまいそうだった。


愛する人を失った喪失感。

愛する人を殺した罪悪感。


その2つが混ざり合って、絶妙なモノを創り上げた。

僕を騒ぎ立てる、何かを。


その血の気のない唇に自分の唇を寄せ、僕は幸乃の胸元に刺さったナイフを抜いた。

傷口から、血が溢れ出す。

その血を人差し指で掬い上げ、口に運ぶ。


「しょっぱい……」


赤黒い幸乃の血は、しょっぱかった。

それは涙を誘うものになり、一層僕を悲しくさせた。
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