殺人ごっこ
「……太郎、凛太郎!」
ちぇ、いいところなのにな。
下から母さんの声が聞こえた。
ここで返事をしなければ、ずっと叫んでいそうなので短く答えた。
「何だよ……」
「幸乃ちゃん、来ているわよ」
幸乃、か。
帰るとき泣いていたけど、大丈夫かな。
そうだ、幸乃にもこのサイトのことを教えてやろう。
「ん、じゃあ上がらせといて」
「分かったわ。幸乃ちゃん、凛太郎は2階よ」
そうだ、幸乃は小さい頃から英語をやっていたから、この文が読めるかもしれない。
勢いよく扉が開き、笑顔の幸乃が入ってきた。
よかった、泣いていない。
「どうしたの、凛太郎。今日はすっごくいい顔してる」
「そうかな。ちょうど僕も、幸乃に頼みたいことあって」
幸乃が何かと言うように、僕の見つめる先のパソコンを見た。
「ここに書いている英文、訳せる?」
「うん、まかせてよ」
幸乃がパソコンの画面を食い入るように見た。
僕は期待に満ち溢れていた。
だが、幸乃の表情は次第に曇っていった。
そして、小さく呟いた。
「貴方は……人を殺さなくてはいけない」