腹黒教師の甘い策略
「もう、あんなやつ見なくていい。忘れろ。そんで、俺だけを見ろ。俺だけを感じろ。」
私の目を隠したまま耳元でそう言った谷崎。
絶対わざとやってる。
我慢してたのに、そんなことされたら、
「……むかつく。谷崎のくせに。」
「こんな時でも減らず口を叩くんだな。」
そう言って私の目から手を離し、
いつもの憎たらしい笑みじゃなく、
見たこともないくらい優しく笑った谷崎。
なんで今そんな顔するの。
もう、抑えられなくなる。
「谷崎のくせに、
なんでそんなに優しいの。」
今まで我慢してたもの全部をぶつけるように、谷崎の胸にしがみついた。
谷崎のシャツが私の涙で滲んでいくのを見て、申し訳なく思いつつも、もう止まらなくて、私はただ泣き続けた。
「……お前がそんなんだと、調子狂うんだよ。」
そう言って谷崎は泣き続ける私の背中に腕を回し、聖司よりも大きな手で、私の髪を撫でる。
……この感じ、知ってる。
この匂い、この懐かしい感じ、知ってる。
「……谷崎?」
「何?」
「ううん、なんでもない。」
この感じを谷崎に聞いてみようと思ったけど、それを言ったら谷崎に拒絶される気がして、何も聞けなかった。