腹黒教師の甘い策略
「落ち着いたか?」
「……うん、ありがとう。」
保健室に備え付けてある椅子に並んで座る。
結局私はあの後、一時間目が終わるまでずっと、谷崎にしがみついて泣いた。
泣き終わって見ると、案の定、谷崎のシャツは、私の涙で色が変わっていた。
「ご、ごめんね?ちゃんと、洗濯するから!」
「ああ、別にいい。
すぐ乾くだろ。」
「いや、でもそれで授業したら……。」
……間違いなく、生徒たちの間でよくない噂が出回る。
「と、とりあえず、脱いで。
なにか別のを……。」
「今のもう一回エロく言ってみて。」
「バカなこと言ってないで脱げ!」
私がそう言うと、谷崎は楽しそうに笑った。
……こんな時でも口が減らないのはあんたも一緒でしょ。
呆れながらも、谷崎が脱いだシャツを保健室にある洗濯機に入れた。
「早くこれ着て!
こんなところ誰かに見られたらなんて言われるか……、」
「何?どんなこと想像してんの?」
白衣の下に着ていた大きめのジャージを脱いで、谷崎に差し出してそう言うと、谷崎はまたいつもの憎たらしい笑みを浮かべた。
……さっきまでの優しさはどこに行ったのよ。
一瞬、谷崎を睨んでみるが、それでも谷崎は楽しそうに笑っている。
……やっぱり、むかつく。
でも、
「……ありがとう。谷崎。」
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもない。」
消え入りそうな声で呟いた言葉は谷崎には聞こえてなかったみたいで、少しほっとしながら、今度は私が楽しそうに笑った。