腹黒教師の甘い策略
腹黒教師の裏事情
赴任してきてすぐ、あいつを見つけたとき、これはもう運命だって心のなかでガッツポーズをした。
正直、赴任してくる前までは、合コンのことなんてすっかり忘れてた。それでも、有沢を見た瞬間、脳裏に焼き付いて離れなかったあの時の有沢の笑った顔が、ふわっと花が咲いたようにまた頭のなかに浮かんできたんだ。感慨深くそう言うと、それまで難しい顔をしてマグカップや皿などの食器を選んでいた有沢は、「またからかってるんでしょ。」と照れたように笑った。
……うん、可愛い。
不意討ちでくらった笑顔に、にやけそうになる口もとを慌てて手で覆う。
有沢に想いを伝えてから、半年が経った。俺と有沢は少し前から俺の家で一緒に暮らしはじめた。朝起きて、キッチンに有沢がいて、夜寝るときは同じベッドで眠る。幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。
もちろん以前よりは喧嘩は増えたし、些細なことで言い合ってしまうこともある。洗濯物の畳み方、味の好み、一緒に暮らすようになってそういういざこざも増えたけどそんなことよりも幸せだと思うことの方が多い。
「もう、谷崎聞いてるの?」
「あ、いや聞いてなかった。」
「何回も言ったのに!このマグカップとこっちのマグカップどっちがいい?」
そう言って少し怒りながらも、黄色のマグカップと青のマグカップを見せてきた有沢。俺とお揃いのものを使いたいから、とマグカップを見に来たが、正直、コップなんて何だっていい。お揃いのものを使いたいなんて可愛すぎるわがままを言う有沢が欲しいものなら何だっていい。