腹黒教師の甘い策略
鋭く俺を睨む有沢の視線をするりとかわす。
相変わらず可愛いげがない。いや、そんなとこも可愛いんだけど。
……有沢は今、なに考えてるんだ?俺が有沢のことで頭がいっぱいなように、有沢も俺でいっぱいだったらいい。
「もう、今度は急に黙って、どうしたの?」
「お前は、なに考えてるんだ?」
「えっ、うーん……お腹すいたなあ、とか。」
俺の突然の問いに少し驚きながらも、うーんと、考えた素振りをして、そう言った有沢。その、らしい答えに思わず吹き出してしまった。
「ちょ、ちょっとなんで笑うのよ。仕方ないでしょ、朝ごはんもそんなに食べずに出てきちゃったんだから。」
顔を真っ赤にして、俺の胸を叩く有沢を見て、また吹き出しそうになったが、そんなことをすると有沢が不機嫌になるのが目にみえて、なんとか耐えた。
こいつはわかってるんだろうか。そんな些細な一言でさえ、俺の心臓があり得ないぐらいに高鳴るのを。
そんなことを考えて、俺はまた、小さく笑った。
「もう!いつまで笑ってるの!」
「そんなに怒るなよ。可愛い顔が台無しだ。」
「またそうやってはぐらかす!もう騙されないんだから!」
「まあまあ、機嫌直して、なんか食べに行こう。なに食べたい?」
可愛い、と言われて少し照れたのか、顔を赤くしながら、尚も怒る有沢に、少し優しく微笑んでそう言ってやると、それだけで、嬉しそうに笑った。これだけでこんなに幸せそうに笑うなんて、婚約指輪をあげた時にはどんな顔で笑ってくれるんだろう。
日曜日の午前11時半過ぎ、俺の手で全て覆えてしまうほど小さな有沢の手を握りながら、そんなことを考えて、小さく笑った。
腹黒教師の裏事情
End