腹黒教師の甘い策略
「ほらほら、何か頼みな?ね?」
「う、うん。
私もチューハイにしようかな。
トマトチューハイと、
あ、枝豆もお願いします。」
香織に煽られ、店員さんを呼び、
メニュー表を勢いよく開き注文する。
「トマトチューハイと枝豆ですね。」
私の注文を繰り返し、では少々お待ち下さい、
と、爽やかに厨房の方に消えたアルバイトらしき男の子。
……あんな爽やかな子でも、やっぱり浮気とかするのかな。
「さぁ、どうだろうねー。」
「え、」
あれ、私、もしかして今声に出てた!?
驚く私に、呆れたように
“ばっちり声に出てたわよ”と微笑んだ香織。
なんか色々ありすぎて本音の抑え方も忘れた。
聖司だって浮気するなんて思いもしなかった。
あんな優しい人が浮気なんて、
ぼーっと悩む私を心配そうに見つめる香織。
そんな香織の視線にも気づかないふりをして、
うつむいた。
「お待たせしました!トマトチューハイと、
枝豆になります。」
にぎわう居酒屋に響いた店員の明るい声。
いつもここに来たときはこの明るい声にも元気づけられてたのになー、今はなんか落ち込みすぎてなにも考えられない。
「ありがとうございます……」
店員さんが去っていった後、
運ばれたトマトチューハイに口をつけた。
「うん、やっぱりおいしい!」
「悠姫、ほんとそれ好きよね。」
私の持つトマトチューハイのグラスを指差し、
そう言ってふふっと小さく笑った香織。
甘酸っぱいトマトチューハイは
癒してくれるというか、特に今はいつもよりも
おいしく感じた。