ジュリエットじゃ終わんない

「深紅!
ちょっと深紅、聞いてるの!?」


あのヒトの声に、ハッと我に返って…
視線を向ける。



「お酒のつまみが無いから、そこの売店で適当に買って来て!急いでね!」



火葬場の控え室では…
バァちゃん達が、親戚とかお坊さんの接待をしてた。



なに買えばいーか、わかんないけど…
親は忙しいそーで…

とりあ売店に向かった。





ふと、チー鱈を目にして…


あ、コレにしよ。

ジィちゃん好きだよね?
お酒飲む時、いつもつまんで




ーとたんに!!


リアルな実感の巨波が、容赦なく現実逃避を呑み込んだ。





ジィちゃんのために買おうとしたソレは行き場を無くして…


なんのためにココに居るのか…
ーーーそう、








ジィちゃんはもういないんだ!








大粒の涙がボタボタと零れて…

その場に泣き崩れた。
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