ジュリエットじゃ終わんない
茫然とその場に立ちすくむと…



「深紅ちゃん?」


突然かけられた声に、思わず肩がビクッとなる。




「あ、お父さん…、おかえり…」


「ただいま。

…部屋、驚いただろう?
カーテンは(深紅の)お母さんが変えたんだよ?
色、すごいよね」

そう、優しく笑う。



「…趣味わる」

あたしのひと言に、さらに笑って…


そっと、優しい眼差しが向けられた。



「なぁ、深紅ちゃん…
思い出してごらん?

おじいちゃんの顔は、とても穏やかだっただろう?


それは…

深紅ちゃんの優しさに包まれて眠りについたからだよ」



目を大きくした視線をぶつけると…

優しい頷きが返ってきた。



「癌で苦しみながらじゃなく。


幸せな…

あったかい最後を迎えられたからだよ」



その瞬間。


涙が、堰を切ったように…
溢れ返った。




その言葉は、救いになって…







心がふわぁ。


と、軽くなってく…







そして、お父さんのあったかい優しさが…

あたしの頭を、撫で続けてくれた。


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