『特別』になりたくて
カチカチカチ……時計に針が一分一秒と進む中、私達四人は勉強を始める。


「まずは八代さんのできる範囲を知りたいから、これ最初から解いてくれる?」

 
会長は言い手提げから付箋のされたノートを取り出すと一頁目を開いて瑞姫に手渡した。


「うわ……ビッシリ書いてある……」

 
中を見た瑞姫は極端にゲッソリとした声で呟くと助けを求めるように目で訴えてくる。


「が、頑張れ……!」

 
手伝ってあげたい衝動に駆られるが、それでは会長の気持ちも無駄にしてしまうし、瑞姫の為にもならない。
そう考えて応援するしか私には出来なかった。


「憂姫の裏切り者~!」

 
恨めしそうに言われるが今度ばかりはどうしようもない。
だからこそ、瑞姫から背を向け、隣の九條君に向き直った。


「えっと、苦手な分野はありますか?」

 
ニコニコと見守るように私達のやり取りを見ていた九條君だったけど、声を掛けるとすぐに答えてくれた。


「そうだなぁどれも平均くらいには出来るんだけど、強いて言うなら歴史とかが苦手かな。何か、昔の人の名前って似たりよったりで紛らわしいんだよね」
「なるほど、確かに似た名前の方は多いかもしれませんね」

 
そうなると、暦事に書き出して覚えていくか、印象的な出来事と一緒に覚えるのが得策でしょうか。
うーん、自分で暗記したり理解するだけならここまで手間取らないのに、人に教えるのって難しいな。
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