『特別』になりたくて
私に比べて会長はーー瑞姫のために、あんな問題集まで用意してて教えるのだって上手だし、九條君だって会長に習った方が分かりやすいんじゃ……?


「……ーい、おーいってば、憂姫ちゃん聞こえてる?」

 
すっかり自分の思考の渦に飲まれてしまって、今が勉強中だということを忘れかけていた。
いけない、いけない。こんなんじゃ九條君にも迷惑をーー


「ごめんなさい、それで覚えられそうですか?」

 
気持ちを切り替えて、集中しないと。
そう自分に言い聞かせながら、九條君に尋ねる、と。

「大丈夫? 心ここに在らずって感じだったけど」
「大丈夫です、少し考え事をしていて……」

 
チラリと隣で勉強に励む二人の姿を見てしまう。瑞姫、嫌そうにしながらもちゃんと会長の言うことを聞いて頑張ってる。
会長も時々怒ったような表情をするけど、何だか楽しそうだし……。


「もしかして……飛鳥と瑞姫が楽しそうで嫉妬しちゃった、とか?」
「!?」

 
会長達に見入っていたからか、耳元まで顔を近づけられていることに全く気付かなかった。
そのせいもあって、大袈裟に体がビクッと浮いてしまった。


「その反応、図星だった……?」

 
すっかり赤くなったであろう私の顔を覗きこむようにして見てから九條君は言った。
図星? そんな訳ない、これはただ急に耳元で声が下から驚いただけで、二人に嫉妬とかそんな訳……。
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