『特別』になりたくて
誓ったはず、なんだけど……。おかしい。


「何で、保健室で寝てるの……?」

 
自分の事なのに、こうして保健室で寝ている状況が理解できない。
だって、私は今頃教室で皆と試験を受けているはずで……。
そう言えば、今が一体何時なのかも分からないかもしれない。


「起きなきゃ……」

 
起きて状況を確認しないとーーそう思い、寝転んでいた体を起こしカーテンの仕切りをどける。
 

「う、そ……」

 
真正面にある時計が示す時刻を見て言葉を失った。
現在の時刻……午後十六時半過ぎ。つまりは夕方で、この時間、試験はとっくに終わって。
ショックのあまりその場に座り込む。なんて事だろう、試験当日に寝過ごすなんて……。


「……」


瑞姫になんて言えばいいんだろう。
うんん、言わずとも同じクラスなんだから、とっくに知ってることだろう。
 
やるせない思いが募って、ぎゅっと拳を握る。
ここで寝ていた理由を思い出したのだ、至極単純で一番恐れていたこと、寝不足で体力測定中に私はーー倒れた。

 
そして先生に保健室へ運ばれたというのが真相に思える。


「鞄取りに行かないと……」

 
俯き後悔に浸るのは簡単だけど、それでは何も解決しない。
だから、今後のことを考えたら動き出さないと。


「補習決定だなぁ……」


呟くように言った言葉は、夕闇に鳴くカラスの声で掻き消され軽くなった体と、鮮明になった思考で教室へと向かった。

誰もいない廊下を気重に進み教室に到着する。
静まり返った教室にポツンと残された自分の鞄を手に取り立ち尽くす。
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