『特別』になりたくて
「瑞姫はもう帰っちゃってるよね……」

 
いや、瑞姫どころか試験が終わってすぐの放課後くらい誰だって早々に帰りたくもなる、か。
寝不足は自業自得だったとはいえ、虚しくなってくる。
まるで世界に一人取り残されたかのようなそんな気分だった。


「馬鹿なこと考えてないで早く帰ろ……」

 
校内に居るから虚しくなってくるんだ。
それが分かってるなら一刻も早く立ち去ればいい。
そう思うことにして下駄箱へ向かう。

その時だ、廊下の前方から足音が近づいて来てーー


「やーっと見つけたー!!」

 
姿を見分けられるほど全速力で近付いて来たのは瑞姫だった。
近づいてきた勢いのまま腕を掴まれて。


「み、瑞姫っ?! 帰ったんじゃなかったの?」

 
強く握られた腕と微かに乱れた呼吸が聞こえて、どうしてそんなに探していたのかが気になってそう聞く。


「帰るわけないじゃん! 憂姫倒れたんだよ! それを会長が保健室に……っと」

 
しまった、という表情で瑞姫が押し黙る。
今、会長って言ったよね? 聞き間違えでなければ会長に当たる人物は一人しか知らない。
< 17 / 25 >

この作品をシェア

pagetop