『特別』になりたくて
軽い昼食を終えて、今は私は……校庭に居る。
何故、外にいるのかそれは私の嫌な予感が的中して……。
体育の個別補習を三日間受ける事が確定したからだ。


「やっぱりと言うか、体育の補習なんてお前だけだぞ……筆記は全て平均以上で合格なのにどうして体育はこんなに酷いんだ」

 
先生の哀れむような視線と声が胸に刺さる。そんなの私の方が知りたいですよ。
そう思いながらも準備運動をこなしていく。

今から行うのは短距離走や反復横飛びに砲丸投げなど一般的なものの練習だ。
それをひたすら繰り返し基礎体力を上げるのが目的らしいけど……。


「それじゃあ、まずは短距離走からだ」

 
先生の合図で走り出すが……自分で分かるほどに遅く、息切れが激しい。
走り終えて先生の表情を見ても平均に遠く及ばないことは一目瞭然だった。
これは、想像以上にまずい様な……。

そんな気持ちに駆られつつも体力測定で行う種目をひたすらに繰り返しーー
夕方、終わりの合図がある頃には全身汗だくで体が自分のものじゃないかのように重かった。


「はぁはぁ……」

 
終わってすぐ、水分補給をするけど、それくらいでは息切れが収まらない。
首にかけていたタオルもすっかりと濡れてしまって、後から後から出てくる汗を腕で拭うほかなかった。


「一日目からこんなで、合格できるのかな……」

 
あまりの体力のなさに不安になってくる。
足は既にパンパンだし、腕も上にあげられないくらいに痛む。
寮に戻る前に保健室で湿布をもらって帰ろうとそう決める。


「弱音を吐くのはまだ早いよね……」

 
そう自分に言い聞かせ、ようやく落ち着いてきた呼吸に安堵しながら重い足取りで保健室に向かう。ヒリヒリと痛む体が少しでも軽くなる事を祈りながら。
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