『特別』になりたくて
四人で帰ることになったのは良いものの道中、瑞姫と九條君は相変わらず仲睦まじいし、それを横から阻止しようと奮闘する会長の姿も教室での事と重なった。

そんな三人から少し離れた後ろの方で見守ってると不意に思う。
この場に私は居ても居なくても同じじゃないかなーと。
こんなふうに考えるのは楽しげに笑う瑞姫が眩しくて羨ましく思えたからだろうか。


「嫉妬、とか?」


ボソリと呟いてみたけど、何か違う気もする。
自分の事なのにこうも分からないなんて、ちょっとブルーな気分だった。

惨めだなぁ……。

ぼんやりとそう思いながら、すっかり日の落ちた暗い空を見上げる。
六月の半ばのこの時間、生温く重たい風がまとわりついてくるような気がした。

◆◇◆

校舎を出てから四人で歩き始めて十分足らず。目的地である寮が見えてくる。
言い忘れていたが、私達の通う高校は自宅から登校する人と寮から通う二パターンに分かれている。

どうして寮があるのに自宅通いの人が居るかというと、まぁ単純に校舎に家のほうが近いという理由や同級生と同じ屋根の下生活するのが苦といった人達が自宅組というわけで。


「じゃあ、そういう事で決まりだな」
「僕の言い分は完全に無視なわけだ」
「いいだろ減るもんじゃないし」
「そーだよ、人助けだと思ってお願いします!」
「はぁ。都合のいいというか何と言うか……僕は分かったけど、伊波さんの予定はいいの?」

 
黙々と自分の思考にハマっていたからだろうか。不意に話題が自分に向けられて戸惑ってしまう。
< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop