もう、きっと君と恋は始まっていた
prologue





『知佳、俺たちさ、やっぱ戻ろっか…』



夕日が差し込む、いつもの教室。


君と私だけ、そんな中で、君は静かな声でそう言った。





『……え……?』


私は彼に聞き返すように言葉を発したけれど、君があんまりにも辛そうな顔をしているから、聞き返さなければ良かった、そう後悔が押し寄せる。





『俺たち、友達に戻ろって言った』




さっきは“戻ろ”、そう言っただけじゃん。

なんで今回はご丁寧にも“友達に戻ろ”って言うの?





『あー…えっと、なんで…?』


さっきも聞き返して後悔したのに、それでも再び君の言葉に問いかける私はバカだ…。


そう、心の中のもう一人の自分が冷静にコメントを出してくる。





『…うん、なんかさー、俺たちは友達の時の方が良かったのかな、とか思って』



“友達”…

君を“友達”と思ったことなんてなかったけど。


私は、君の“友達”になったことない。


だって、私と君は、“協力者”だったから。


でも、もうあの二人のために何かを君とやるわけではないから、だから“友達”っていう関係でもいいのか…。






『…………そっか、うん……』



私の返事に君は夕日が差し込んでくる窓に視線を変えて、そして鼻で笑った。


私はその様子を見て、そして君が見つめている外に視線を向けた。






『やっぱさ、埋めらんねぇよな…』


私は、その言葉にもう一度だけ、君に視線を変えた。






うん。


君の心にぽっかり空いてしまった穴は、あの子じゃなきゃ埋められない。


君についた大きな傷は、あの子しか治せない。




大丈夫、そんなこと最初から知ってたから。




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