もう、きっと君と恋は始まっていた





『………』



私は何も言い返せず、ただ黙って崇人の目を見つめた。








『俺がどんな思いでお前の傍にいたか分かるか?
 どんな思いでお前の恋を応援してきたと思ってんだよ?

 それなのに、俺の気持ちなんて、何一つ知らない、そんなお前から突然、好き…とか言われても信じられねーっつうの!』









『……どんな思い…?
 分かんないよ…知らないよ………言ってくれなきゃ…分かんないよ……』



もう、その言葉を言い終える頃には、私の目からは大粒の涙が溢れていた。








『好きな女が別の男を好き…とか。
 自分の気持ちをひたすら隠して応援してやらなきゃいけない気持ちとか。
 手に入らない女の傍にいるのがどれだけ辛いか……』





もう、崇人の姿なんて、涙で滲んで見えない。



だから、見えないから、言える、そう、思った。






『じゃ…崇人に分かる…?
 “友達に戻ろう”、そう、言われて、必死で笑ってた、私の気持ち……。
 “由樹のことだけ見てろ”って、そう言われた時の、私の気持ち…。
 “由樹のところに行け”…そう、好きな人と違うところに、“行け”…そう言われた時の私の気持ち…。
 崇人に分かる……?』




それだけでも、私には十分すぎるくらい、苦しくて、悲しくて、辛くて、いつも心の中は大雨が降り続けるかのように、私は泣いてたんだよ…?





『好きな人に…やっとの思いで…“好き”って伝えたのに……それでも“由樹のことが好き”そう誤解されてる私の気持ちが……崇人に分かる……?』





ずっと、ずっと。


ずっと、私は由樹君のことじゃなくて、崇人のことで、泣いていたんだよ…?







『……………………好き………。
 でも……私の気持ちなんか崇人には伝わらないよね……。
 だから、もう、いい…』





もう、叶わない恋を続けるのは。


もう、届かない想いを必死になって抱えてるのは。


私には…もう、無理…。








『崇人……
 あの時みたく、“ごめん”、そう、私に言って…?
 そうしたら、この想いも消すから………。
 今度こそ、ちゃんと崇人のことを笑わせてあげられる友達に戻るから……だから、私に、“ごめん”って言って……』







私の恋は、崇人、あなた自身で終わりにさせてください。




私は、真っ直ぐに、崇人の目を見つめた。










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