もう、きっと君と恋は始まっていた




私から視線を反らし、段々と俯いていく崇人。





『……………は?…………なんだよ、それ………』






崇人は、右手を俯いてるおでこに添えて、そう、静かに言った。








『…勝手に終わりにすんなよ‥‥』





崇人はゆっくりと顔を上げていく。






『てか………知佳…無理…』



崇人の“無理”の一言に、今度は私が俯く。








『俺、お前のこと、一度も“友達”なんて思ったことねぇーから。
 お前は…知佳は俺にとって、出会った頃からか、好きな女、だった。

 だから無理、お前が俺の友達とか……無理。
 もっと早く、俺を好きだって、俺のことが好きだって、そう、言えよ…。

 こっちはずっと、お前が俺に振り向いてくれんの、ずっと…待ってたんだからさ…』





崇人の言葉に、私はゆっくりと顔をあげる。



再び視線が合った、崇人の目はとても優しいもので。


私は、その目を見て、涙混じりの笑顔を見せた。






『……ごめんね。
 でも、崇人が好き、崇人のことが好き……』


震えた声になってしまったけれど、それでも、崇人は私の告白に優しく微笑んでくれた。







『…うん、知ってる』






そんな返事だったけど。


それでも、私の心は温かくなる。







『…なぁ、知佳。
 俺の一番の彼女に、なんねー?』





きっと、きっと。


ずっと、ずっと。


崇人から言ってもらいたかった言葉は。

崇人から欲しかった言葉は。



君の特別になれる、この魔法の言葉、だったんた。







『……うん、いいよ』




そう、私が答えた時は、崇人は私の手を引いて、自分の胸の中に引き寄せていた。









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